今年2025年は戦後80年という節目の年。それに伴い、長谷川町子が漫画家としてデビューした1935年から終戦までに手掛けた作品を中心にご紹介します。
戦時下における出版物に対する厳しい表現規制や、戦意高揚のための内容統制は、児童向け作品にも及びました。このような状況を目の当たりにした当時の漫画家たちの胸中には、様々な感情や想いが渦巻いていたことでしょう。長谷川町子もそのうちの一人。そのような状況下でも、町子は自身の作品づくりの芯を貫き通し、読者、特にこどもに向けた作品を描き続けました。その姿勢は漫画家としての意地と、戦争に対してのささやかな抵抗も含まれていたように感じられます。
本展では町子戦時中に描いた作品や軍需工場のルポ記事、それに加えて戦後の生活を描いた作品を一挙に公開します。戦中に求められた作品と、戦後の作品の内容や表現の変化にも注目しながらご覧ください。また、町子が残した作品と当時の記事から、戦争というものを改めて知り、考える機会となれば幸いです。