着物で生活していた江戸時代は、帯に挟んだり懐に入れたりして身の回りのモノを収納・携帯する「袋物」や、結髪を飾る櫛やかんざしなど、独自の装身具が発展した時代です。私たちがバッグや髪留めなどに品質やデザイン性を求めるのと同様、当時にも身に着けるモノに美と贅を尽くした人々がいました。
豪華な錦や金襴、舶来品の羅紗・天鵞絨・更紗・金唐革・鼈甲などを材料に、細部の金物にまで凝って飾り立てられた普段使いの小物の数々は、現代の感覚で見てもとてもお洒落です。しかしながら実用品でもあったこうした装身具を美しい状態のままで愛でる機会は、こんにちではなかなかありません。
そこで本展では、江戸風俗研究家・平野英夫氏こだわりの其角堂コレクションから約250点の逸品を一堂に紹介し、江戸時代のお洒落事情と生活の一端を垣間見たいと思います。江戸風情の残る川越で、往時の粋な美意識をお楽しみください。